第三回:複業時代に企業はどう変わるのか?大企業編(前編)
複業が当たり前になる「複役社会」に、大企業はどのように向き合うべきなのでしょうか?
●進む企業の副業解禁
まずお伝えしたいのは、大手企業が副業解禁に徐々に進み始めているという点です。
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二つはそれぞれ別の企業を対象に別々の機関がしたものですので、決して正確な比較ではないのですが、数年で副業解禁企業は増加していることが見て取れます。注目すべきは右側の経団連の調査です。経団連は積極的に副業を推進する立場をとっていないのですが、それでも20%以上の会社が認めており、懸念事項が払しょくできれば5割以上の会社が副業解禁しても良いと言っています。20%と言う数値は、マーケティングの世界で「イノベーター理論」のなかに登場する、イノベーションが普及するポイント(キャズムと言われる)である16.5%を超えた、つまりこれから一気に普及する段階にあるということを指しているのです。
また、2018年に副業ガイドラインやモデル就業規則の変更が行われた結果、18,19年の社内検討や調整期間を経て、2020年に副業を解禁する企業が続発する可能性が非常に高くなっています。
●副業解禁の理由
私はこの3年ほど、副業を解禁した、或いは解禁を検討している大手企業へのインタビューを行ってまいりました。そこでは様々な思惑で副業を解禁する企業の姿が見えてきています。インタビューでのヒアリングの結果、副業解禁(予定も含む)の理由としては、大よそ以下の内容に集約されました。
【副業解禁の理由】
✔社員のやりがいや学び・キャリア自律を促したい
✔(オープン)イノベーションの促進をしたい
✔人材の採用~選ばれる企業になる
✔中高年の人材に新しい気づきを得てほしい
✔その他(もともと副業解禁している、経営者マインド等)
副業が社員のマインドやキャリアなどの自己開発になること(キャリア自律)を期待している会社が多くあります。また、多くの企業が50代以上の社員(2020年はバブル入社世代が全員50代を超える年です)の「活性化」策としてこの副業制度を活用したいと考えているという意見が大多数であることも特筆すべきと思います。メディアでも50代以上の社員を対象にした早期退職制度(リストラ)などの記事が多くありますが、出来れば副業などで活性化してほしい様子がうかがえます。
●副業解禁するとどうなる?
昨年、パーソル総研の調査で面白いデータが公表されました。
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会社が副業を解禁している企業において、副業している個人に「本業」への意識や状況
の変化について聞いたデータです。
大変ユニークなのは、ここにあげたいずれの指標も、副業した方が「本業」の仕事への意識が良くなる傾向があるということです。これは副業させようとする会社にとっては福音ではないでしょうか?
もちろん、この調査時点で副業解禁している企業は働き方変革にも積極的であり先進企業なので従業員のモチベーションも高いということも言えるかもしれません。ただ、本業の仕事での集中力や効率性が上がったというのは、経営側にも望ましい指標だと思います。
こうしてみてくると、大手も確実に、しかも自社の経営課題や戦略に合わせた副業解禁政策をむしろ積極的にとったほうが良いという局面に来ていることを感じずにはいられません。
次回、そんな副業が解禁された「複役社会」に(大)企業はどうなるのか、考えてみたいと思います。