複業が当たり前になる~「複役社会」を考える 個人後編

第二回:複業時代に働く個人はどう変わるのか?後編

 

前回は主に“なぜ複業を始めるのか?”を中心にお話ししました。
後編は、複業の仕方の種類を説明し、これが進むことによって働く個人はどのような未来像を描いていくのかについても少しお話しできればと思います。

 

●複業のしかた

「複業」と一口に言っても、人によって、もしくは現在の置かれている状況や、未来に成し遂げたいことなどによって、様々です。もちろん、何が良い/悪い、優れている、などというものはなくその人に合った複業をすることが人生を豊かにすると思っています。
 その前提で、「複業」を以下のように類型してみました。まずは金銭などの報酬を伴うものとそうでないものに分け、さらに細かく見てみました。(下図)

ここでは、一般にイメージしやすい有償での働き方以外に、無償活動も含めています。ボランティアは非常に広い概念ですが、その中で「プロボノ」を別にしています。“プロボノ”とは、自身の(ビジネスの)専門スキルを社会貢献などに活用する活動と定義されています。有償として提供できるような「プロフェッショナル」なスキルを社会貢献に使う点で、あえて一般のボランティアとは分けています。
 また、アートやスポーツなどでプロフェッショナルなスキルを発揮するボランタリーな活動も自分の人生を豊かにし、キャリアの大切な一部になっているという方も多いと思いますので、無償活動の一つに加えています。

 

 一方、有償活動ですが、これは三つに大別されると思います。一つ目は他の会社と「雇用契約」を結ぶ、つまり他の会社の社員になるという形です。もちろん、パートやアルバイトも含みます。

 二つ目は、「業務委託契約」で働く方法です。「業務委託契約」は仕事を通じて対等の契約をする、という点で雇用契約とは異なります。「業務委託契約」は法的には「請負契約」(何かしらの成果物の完成を持って契約を行う)、「委任契約」(法律に基づく行為などを行う)、と「準委任契約」(専門家などのスキルで責任を持って業務にあたる)の三つがあります。通常のナレッジワークにおいては、成果物の作成や法律行為の代行を除くものは「準委任契約」に該当することが多いです。
 三つ目は、「複業起業」です。前回、米国でも「Side Hustle」という名で複業起業があると記しましたが、実際起業を始めるときに、「いきなりすべての仕事を辞めて起業する」のはあまり得策ではないと思います。もちろんそうせざるを得ない場合もありますが、よりイノベーティブな内容で顧客ターゲットがクリアでない、或いは収益がまだ少ない事業は副業で初めて軌道に乗せていく方が望ましいと思います。


●未来の働き方

 

 複(副)業が当たり前になる未来はどのような働き方になるのでしょうか?

多くの人はすでに複数の仕事や役割を担っています。そしておそらく、そうした複数の

活動に共通の意味を見出したり、信念を持っている人も増えるかもしれません。自分は何をなすべきか、どうなりたいのか?そうした“志”が重要になります。伝説のコピーライターとして著書も多い竹島靖さんは、「資本主義から志本主義へ」と表現されていますが、まさにそうした変化が起こるでしょう。


 そして、これは同時に個人がキャリアについて考える第一歩ともいえます。P.F.ドラッカーは「何によって憶えられたいか?を問うことが大切」と言いましたが、まさに志を持って何をなすべきか、一人一人が考えなければならない時代を迎えるでしょう。

 

 こうした社会では、「どの組織に所属しているか?」よりも「何をなそうとしているのか?」の方が大切になります。交流会などで名刺を集めるよりも、じっくりとした対話や共通するプロジェクトなどで知り合うことで関係性を育むことに価値が増します。名刺を複数枚持つ人が標準的になるので、むしろ名刺の価値はさがり、リアルやSNSでの関係性構築により「緩い紐帯」的な交流がますます大切になります。

 

 また、仕事がプロジェクト化するので、それによる収入構造も一人一人ポートフォリオとしてデザインする時代になります。複数の所属を持つ人は、一つの所属での収入が少なくなる可能性もありますし、プロジェクトのため短期になる場合があります。言い換えると、何もしないで安定的ではなくなりますので、自身の仕事やキャリアのデザインの巧拙があたらしい収入格差を生んでしまう可能性もあります。

 

 最後に、これはひょっとすると時代に共通していることかもしれませんが、こういう時代になればますます“人の繋がり”による仕事が大切です。自分は何者かを人に知ってもらうことはもちろん、この人と仕事がしたい、この人の考えに共鳴する、といった「人間力」の構築が必要になると考えています。

 

 

 複業が当たり前になる「複役社会」は、決してすべてがバラ色ではなく、時には新しい格差を生み出す可能性もあり、仕事や人間関係の再設計を求められる厳しさもある社会だと思います。
 しかし同時に、AIの時代と相まって、とても人間らしいことが求められ、人間であることや人間がやることに価値がある、と思われる社会になる、なってほしいと考えています。

次回以降は、複役社会で会社や組織はどのように変化するのかについて、考えて参りたいと思います。