複業が当たり前になる~「複役社会」を考える はじめに

1:はじめに

 

新年あけましておめでとうございます。
いよいよ2020年になりました。
私は、2020年は副業解禁が一気に加速する、まさに副業解禁元年、副業が当たり前になる年になると確信しています。

なぜそうなるのかを考えるときに、単に今の大手企業のニュースを見るだけでなく、政府が副業を勧め始めた「働き方改革」(2016年)前後の社会や経済の動きを見ていくと、本年が「副業が当たり前になる」年であることが“なるほど!”と感じていただけるのではと思っています。

 まずは何と言っても、人口の減少トレンド。
 特に少子高齢化によって、労働人口とされる15歳~65歳までの人口減少予測は大きなインパクトがあります。労働人口が減るという状況の中で、人が一つの仕事に集中してしまうことは、全体的な労働力の低下を招いてしまいます。また、日本の雇用において解雇が非常に難しいこと、労働生産性が低いこと、雇用保蔵率(社内失業率)が高いこと、等の調査結果や動向により、時代の変化の速さに人材が追いついていない構造的な問題が露呈しました。

 また、これも以前から言われていますが、日本は開業率が諸外国と比較しても低く(5%前後、欧米諸国は10%前後)、リスクを好まない姿勢が新しい産業を生み出せない一因とされています。例えばフランスが2009年に実施した個人事業者制度(Auto-EntrepreneurMicro-Entrepreneur)は個人が簡単に起業することで15%台という爆発的な開業率の増加を生みました。
 そして、開業率が伸びない中で、経営者の高齢化による事業承継問題(事業承継がうまくできず廃業する企業が続出すること)がいよいよ顕在化しています。政府の試算では、このまま廃業が続くと2025年には22兆円規模の経済損失と650万人の雇用が失われるとしています。
 更に日本においては、企業がこれまでの自前主義や日本型雇用から脱却できないために、産学官連携などオープンイノベーションで成果を上げられない、と言った課題もあります。
 このような背景から言えることは、これまでの働き方を変えて、複数社に勤務したり、勤めながら起業したり事業を承継する、などの“複役社会”にシフトしない限り人口減少というトレンドで経済を上昇どころか維持することも難しい状況にある、という実態があります。
これが、政府が2016年に発表した「働き方改革」の一つに“副業・兼業”が組み込まれている理由と考えられます。

そして、2016年の政府発表後、2018年の1月に、大きな改革がありました。厚生労働省が「副業ガイドライン」を発表し、それまで公開していた「モデル就業規則」における副業の内容を180度転換させ、「基本的に労働者は副業ができる」としたことです。
 このガイドラインは、大きなインパクトがあり、メディアなどでもこの2018年が「副業元年」として報道された結果、企業としても検討せざるを得ない問題となったのです。そうして2018年、2019年と審議を重ねた結果、2020年より副業解禁を行う企業が続出することになります。

しかし、これまで「副業禁止」として何十年も作ってきた経済や企業の“常識”がそう簡単に変わるものでしょうか?
また副業が解禁されることで、個人や企業、あるいはその他のセクターにはどのような影響や懸念点があるのでしょうか?

副業が本格化する2020年に、個人、企業、その他のセクターや社会は、どのように変わるのか、またどのように複業が本格化した“複役社会”を迎えるのか、について、セクター毎に詳しく見ながら皆さんと一緒に考えていきたいと思います。


第一回:個人編前編(マインド編)

第二回:個人編後編(実践編)

第三回:大企業編

第四回:中小企業編
第五回:スタートアップ・ベンチャー編

第六回:フリーランス

第七回:非営利組織・NPO

第八回:自治体

第九回:日本経済・社会
第十回:まとめ

 

どうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

令和二年一月一日
ナレッジワーカーズインスティテュート株式会社

代表取締役 塚本恭之